ヒヤシンス


 優しさ溢れるその丘で、流れゆく雲を見ている。
 草の上に寝転がって思い切り深呼吸。
 緑の匂い。小さな花の匂い。澄み切った空気の匂い。
 今の僕は寂しくないよ。
 あなたの背中を追いかけてきたけれど、
 とても追いつけないよ。
 あなたは先に行ってしまった。

 虚しさも今は感じない。
 今の僕は何を感じる事が出来るのだろう?
 この丘の優しさ?風は知らんぷりをしている。
 ねえ、僕は何を感じれば良いのだろうね?
 良い思い出も良くない思い出も、時って奴が持ち去った。
 だから今は何も感じない。感じないって思っているだけかも。
 本当は人一倍何かを感じているのかも。

 あなたはどこに行ったの?
 人生に区切りを付けたあなたのことさ。
 ねぇ、本当にあなたはどこに行ったの?
 
 会いたいよ。
 あなたは先に行ってしまった。
 色々なしがらみから離れて、この丘にぼんやり立っているあの木みたいに、
 当たり前にそこにいて、誰からも気にもされないような、
 そうさ、僕はあの木になりたい。
 
 ねぇ、もう何も感じないんだ。
 僕の感情は壊れてしまった。
 晴れの日も、曇りの日も、雨の日も、嵐の日も、僕はこの丘にいる。
 あの木になるんだ。
 あなたは先に行ってしまった。
 僕はいつも置いてけぼりだ。
 
 今日も僕はこの丘にいて、流れる雲を見ているよ。
 変かな?


自由詩Copyright ヒヤシンス 2017-10-21 04:26:04
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