屋根裏に置かれたままのぼんやりとした記憶
宮木理人
倒れた花瓶は音を立てずに
閉じた瞼の裏側に沈み
たくさんの小人たちが行列をつくって
どんどんどんどん階段をくだっていく夢を
みています
雁字搦めに絡まった
優しい文章の尻尾の端を
夜な夜なほどく作業をしていて
やっとの思いでほどけたそれらを
解放してあげようと
それぞれの方向に解き放ってみたものの
みんな意外と自由に走りださずに
そこらでじっとしています
あれ、と思ってみていると
みんな一斉にこちらのほうを、無表情で見つめだして…
(屋根裏部屋にて)
僕らは小さな窓から見える
向かいの道路に突っ立ったまま静止している
一人の老人を観察していた
彼女は窓に顔を近づけながら
なにかを話し、僕は光のなかに
揺れる埃を浴びている、彼女の横顔を見つめた
同じ感情を、全く違う言葉で言い表してみせたかと思えば
全く違う感情を同じ言葉で表したりしている
老人の観察に飽きた僕らは
今度は天井の木目を迷路した
彼女はゴールを見失わないように、油性のペンでマークした