無題
◇レキ
世界へつながる大穴が開いて
手を摑んだら飲まれて心が腐った
心が腐れば
ケモノは生きるだろう、と
代弁者がただ不安を配り歩いて
代弁者はなぜ自分に穴をあけながら
人の心を泣かせたがるのだろうと聞いてみたら
生きることは美しいと言い続けていたいから、だそうだ
※
破滅の使者がやってきた
一時の虚無に食われて死ぬくらいなら
ずっと虚しいままに生きなさい
そういって使者は小5から始める
道徳の教科書を配りだした
世界は腐った そして生きた
ただ ひなひなとよどんだ水面を飛ぶ
糸トンボが鮮やかだった
※
平和の使者がやってきて
虚しく生きるくらいなら
血を塗り合い踊りなさい
そう言って平和の使者は
生れたてに戻る尺取虫の毒を配りだした
世界は生きた そして滅びた
埃っぽい空気の中でただ呆然と空を見上げる
猫が美しかった
※
平和と破滅が
手をつないでやってきた そして言った
私らは神様で
生きていないから完璧です
君たちは偏りで
どうしたって生きれると罪だ
なんて醜いんだ、と
世界に苦しみと悲しみと
どうしようもない困窮が吹き荒れました
雲は壊れ、崩れ、泣き、溶け、ぶつかり、混ざり
そして真っ赤に染まりました