無題
◇レキ

雨上がりの清い空に流れる雲の
感情の軋轢に砂糖をまぶして

二人小さく笑い合えれば
距離感にぱちぱち淡い火花が散って

求めて欲しい
求めていたい

どこまで意思疎通に出会っても
少し寂しくなるだけだけど


心が満ちて生きた


僕はなんと小さな場所にいるのだろう





火の風車がある

偶然誰かが触れたのが始まり

轟々と回り続ける

手を風車から離せば忘れていたように焼けただれ
どこまでも続く夜空みたいに悲しくなって
負けたみたいに鈍器で殴られたみたいに苦しくなって

それはもう動悸がどうにも止まらなくなるから

また
涙を振りかざし

火の風車に手を触れる


触れれば火は優しく手を撫でて
しゅわしゅわぱちぱち包んでくれる

代わりに綺麗に手はこんがり焼かれて

風車の風圧でよろめいて手を離すから

忘れたように手は焼けただれ

ああまた
悲しい
苦しいを
繰り返す

苦しみや悲しみは
快楽と仲良しで

何よりの媚薬なんだね





心が平和なら
戦場にいても幸せだろうか

毎日を鮮やかに生きたくて
人はつい
心を乱したがる

そうして誰かは憎み
誰かの心は満ちる





雨 雨 あがるな

心を砕き続けてよ
痛みを 忘れないように
鮮やかさには血の色も
あまたの原色 心が染まる
その危うさに 恐怖に飲まれ
明日の自分さえ分からなくとも

雨 雨 あがれ

陽射し雲間に美しく
脆く崩れる無意味たちに
美しさを何気なく まとわせて
他とのまろやかさを そして
自分の生の執着でさえ
肯定しようと言おう



平和は退屈か

戦場に愛は転がってないか


荒れ果てた雨風の後の雲の美しさは

澄んだ空気の先の景色は

その先に続く毎日が


くるしい





僕は知った

一度開け放たれてしまった扉からの
甘い空気は心に染みついて

心が待ち望み渇望していたそれは
触れ続けないと溶ける熱さで

満ちてしまった心が死ねば
こんなに一人が寒かったとは

幸せがどこにでも転がる魔法であることを
それは保ちつづければ本当になってゆくことを

僕は知らない





心はどこにでも行けるから
会ってなくても分かり合うから嬉しい

心はどこにでも行けるから
知らなくてもいいことまで響いてしまって苦しい

心は自分の中にいるのに
簡単に現実から手を離して飛んでゆく

心はいつも自由で自分らしくありたがるから

追いつかないまま
現実は心との距離に虚しくて

ちぇって舌打ちしている





心よ

身体を忘れるな

ごまかさない本当の幸せを知れ

楽しみにうつつをぬかせ

心 踊れよ
お前は明日を楽しみながら魔法の幸せを摘み続ける蝶であれ


身体よ

心に向かえよ

諦めないで幸せであろうとしようよ

押しつぶされるなよ

身体 負けるな
お前はどっしり力を持ちながら耐える足であれ



心 忘れるな
お前はいつか身体に本当を手渡す役目を持てるのだから

身体 忘れるな
お前にいつか耐えたその分の幸せを心がきっと渡しに来るから


自由詩 無題 Copyright ◇レキ 2017-10-07 22:19:32
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