しんでもいいといえる容易さで
オオカミ



もうすぐくるだろうとおもった

青いさかな色の光沢に塗れて

だけどこなかった




右手の握力がなくなっていくのが
なんとなく感じられて
たしかに感じたのだけれど
だけどだれにもいえなかった

膝が痛んでも
腕を切られても


つよさはよわさをまもらず
よわさはつよさをあいさない
と いう寓話




/
終電に乗らなかった
万引きを咎めなかった
警察につかまった
家出をした
陰口をいった
うそをついた
うそばかりついた


いつも。
わらっていた





/
こわいといえなかった
いやだといえなかった

すきといえなかった
泣かなかった、


だれのまえでも






/
はじめて
わたしのために流されたなみだが
はじめて
だれかのまえでわたしを泣かせた
あのとき
はじめて
なにもかも





/
しんでもいいといえる容易さで

青いさかなの色をした肩によりかかる
おまえはときどきわたしをおもいださない
それでもときどきおもいだす
ぬらぬらとひかるその褪せた眼差したちに
はじめてのきもちすべてあげる



/
みてる
しってる
息がとまるところを
みてる
こわい
いやだ
すきです


だけど。
しってるよ



ちゃんと、
みているよ




未詩・独白 しんでもいいといえる容易さで Copyright オオカミ 2005-03-13 21:54:30
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