しんでもいいといえる容易さで
オオカミ
もうすぐくるだろうとおもった
青いさかな色の光沢に塗れて
だけどこなかった
右手の握力がなくなっていくのが
なんとなく感じられて
たしかに感じたのだけれど
だけどだれにもいえなかった
膝が痛んでも
腕を切られても
つよさはよわさをまもらず
よわさはつよさをあいさない
と いう寓話
/
終電に乗らなかった
万引きを咎めなかった
警察につかまった
家出をした
陰口をいった
うそをついた
うそばかりついた
いつも。
わらっていた
/
こわいといえなかった
いやだといえなかった
すきといえなかった
泣かなかった、
だれのまえでも
/
はじめて
わたしのために流されたなみだが
はじめて
だれかのまえでわたしを泣かせた
あのとき
はじめて
なにもかも
/
しんでもいいといえる容易さで
青いさかなの色をした肩によりかかる
おまえはときどきわたしをおもいださない
それでもときどきおもいだす
ぬらぬらとひかるその褪せた眼差したちに
はじめてのきもちすべてあげる
/
みてる
しってる
息がとまるところを
みてる
こわい
いやだ
すきです
だけど。
しってるよ
ちゃんと、
みているよ