三大へんな植物名の花 (三篇からなるオムニバス)
るるりら

【アカツメグサ】

なりやまないドアホン やぶれた怒号は
親を町ごと殺され震えていた少女のままの老人
おさなくして大人として生きざるをえなかった あなたが
私の玄関を激しく叩く音

そして あなたは
今日もあなたは すべてのものを消毒する
醜いすべての事柄を憎み暴力的に排斥する
いまも赤々と噴煙を上げている爪痕は胸の内

あしもとのアカツメクサの つぶらな露が
あなたの代わりに泣いている
金木犀が笑いのさざなみを 放ちつづけ
それぞれの花々は 花の道をあゆんでいるというのに


【屁糞かずら】

芝生の堤が目の高さにつづき
波のように高低を描いている
点在しているオリーブの銀葉も涼し気に
樹形のすべてが見える真昼 

ここは島の学校の校庭だった場所
丘になることで 海岸線も美しく見渡せるはず
潮風ゆらゆらへクソカズラが比べているのは
廃校校舎と うつくしいヨーロッパ風レストラン

江田島は 海軍兵学校の島じゃったけど
こんどはオリーブの島になるそうな
へへへへ くそはがいいのお わしらあすぐ ぬかれるわ
なんじゃあいうてもやっぱしここは わしらあの島じゃ


【どくだみ草】

植物のようにやさしくなりたいけれど
結局 人は人でしか 癒されないから
和の布でできた お花を一輪あげましょう

どくだみそうの 白い花
絵に描きやすい形のしろい花
紫がかった緑の あいらしい葉の形
毒と言う名 どくというな

薬だから大事にしろというのではないですよ
きょう、
和布でつくられたドクダミ草を あげましょう
ただいとおしい形で「 どくというな 」って 言ってます





自由詩 三大へんな植物名の花 (三篇からなるオムニバス) Copyright るるりら 2017-09-28 15:56:15
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