朝の幻想
ヒヤシンス


 早朝の森で思いがけず、たった今闇を超えてきたばかりの光と出会った。
 昨晩の雨で緑はいっそう鮮やかに輝き、濃い匂いが辺り一面漂っていた。
 貴方の散歩道を熟知していた私は先回りをしていつもの小道を行った。
 とても晴れやかな気分だった。

 小道を入って少し上り坂になっている先を歩くと小さな丘に出た。
 貴方の休憩場所だ。
 丘のてっぺんにある大きな石に腰かけて、私は貴方を待った。
 すっかり日が昇っても貴方はやって来なかった。

 幻想の中で私は貴方と出会い、石の上に二人で腰かけ、朝の挨拶をした。
 特別な会話はいらなかった。
 貴方と同じ空気を吸っているだけで、私は幸せな気分になった。

 すべては朝の幻想が私に見せた夢だった。
 私は貴方もきっと腰かけたであろう石に挨拶をしてその場を去った。
 その帰り道、私は思いがけず、清らかな驟雨にあった。


自由詩 朝の幻想 Copyright ヒヤシンス 2017-09-23 07:34:56
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