水玉
カワグチタケシ

夜の公園、移動手段 
水から上がったばかりの濡れた髪が
いつもより黒く輝いて
僕はその光りを好ましく思った

かつてその人が指輪を投げた
対岸までの長い距離
指輪が不要になるとは
何かが不要になるとは
どういうことか
その頃の僕はちっとも
理解していなかった

七月、僕たちの頭上に
細かい雨が降る
八月、雨は激しさを増す

僕たちの頭上に
こんなにも大量の氷が浮かんでいて
時折
堪えきれず
融解し
落ちる

地上に不規則な水玉模様を描いて

痛みは薄れ
痒みにかわり
やがて消えるだろう

彼女は朝の
都営地下鉄の駅へと向かう
もう一度生きてみようかな

新鮮なためいきをひとつ残して


 


自由詩 水玉 Copyright カワグチタケシ 2017-09-21 23:25:20
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