どっちかっていえば悪いのは僕だった、君が慌てていってしまう前までは
竜門勇気
まるで私が
死ぬの待ってたみたい
バス停で3分前に
息を止めた君の抜け殻が
僕の首を締めながら喋りまくる
うんざりな騒音が雨音の合間合間
鋏の形の指をして
風景を、窓や車輪や雲の向こうを
きりとる きりとっては
僕のポケットにねじ込む
会えない方に賭けたんだ
留守番電話のメッセージじゃ
どれだけ賭けたかわからなかった
会えそうな場所に向かってみる
手紙を書いてポストに走る
まるで私が死ぬのを
どっかで見てたみたい
バスの扉が閉まる音が
君が最後の息を吐いてるみたいに思える
灰皿の缶詰に
火がついたままタバコを捨てた
しかも桃缶じゃん
風邪ひきの匂いがする
濡れたタオルが毛布を濡らす
会えたら言いたいことあったんだ
留守番してた犬に託された伝言を聞いた
あれは7月の終わりだった
5月10日、不在訪問がありました。メッセージは1件。
わんわん、お前はのろまさ
まるで私が死んでるのを
嘘だとでも思ってるみたい
ベンチで君の指を解きながら
月が昇るのを見ていた
ぬるい排気ガスの塊はまだそこらをうろついてる
出会うこともあるだろうし
そうじゃないこともあるだろう
解いた指の間に自分の指を通しながら
しらない家に明かりがつくのを待っていた
出会うこともあるだろうし
そうじゃないこともあるんだ
最後に着た服が一番のお気に入りなんだ
手のひら同士をぴったりとくっつけて
しらない家に明かりがつくのを待っている