SPEAR
むぎのようこ


たとえば、
呼吸や瞬きひとつで
もろくくずれてゆくような
そんなあわい羽で
夜の輪郭をなぞってる
そんなかんじ

やわらかいものから
順繰りにおちてく
それは実り
まだあたたかく湿った
いのちを
頬にそそいでも
どうしても
満たされなかった月が
うっすらと
あおく鳴いた真昼
雲が縒れてあめを降らす
ざあざあと
鼓膜に巣をかけて
ちりちりと
ひかりの
糸がはっかする

いのちが
さいごにまぶしかった
夕ぐれをまねて
さみしくもつれた舌で
うたって
それからオレンジの
チョコレートをほおばる
はつねつする
身体の
みじゅくな
うねりをなぞって
かえってくるものは
みんな
みんなくだらないから
とおくのひかりを
眺めたりも
する、








自由詩 SPEAR Copyright むぎのようこ 2017-09-11 00:36:27
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