滑落
ひだかたけし
逆さまになって
ぶっ倒れ
気付くと
天を仰いでいた
青
濃密な青
漆黒の宇宙空間に
そのまま接続していく
濃密な青
標高三千メートルのアイスバーン
アイゼンの爪先が食い込んだまま
ピッケルが真っすぐ突き立っている
銀白
辺り一面の銀白
流血している?
銀白に赤
谷底へ落ちていく色彩たち
肉体の感覚がない
麻痺している全身
視界が霞む
内と外が重なり
逆転する
濃密な青の広がる空間から
標高三千メートルのアイスバーン
食い込んだアイゼンの爪先
直立したピッケルを観ている
意識は次第に
漆黒の宇宙に溶け込み
(ピッケルとアイゼンが
谷底に落ちていき)
わたしは観た、傍らに
強烈な光の塊を
脈を打ちながら聳え立つ
生命の核の光塊を!