秋の午後
本田憲嵩

マホガニーの卓上で喫する
ココアにもはや甘さが無い
食傷気味の男によってもたらされる
ひとつの清涼剤としての
装飾品への
空虚な安らぎのひと時
つねに持続する
怠ることが許されない日々
すなわち初潮の薔薇の咲くことのない百合色の肌の手入れ
それを補うかのような
大きな薔薇の花飾り(カチューシャ)の象徴(シンボル)
忠誠の証である
その細い首を絞めつける黒いチョーカー
そして丈の短い黒い着物
それらでもはやすっかりと記号化されて
おそらく今日もきわめて事務的にことを運ぶ夜
一日ごとに冷たくなる風が
痩せこけた身体の隙間と
頭髪の隙間に絶えず吹きぬけ
死に絶える
彼は日ごとに風化する
深海の死者の暗い深度を帯びた瞳を通過する
秋の庭園のトンボたちの午後
まるで飛行機のルーツのように次々と飛び立っていく
彼の主はそんな憂いの表情を愛する



自由詩 秋の午後 Copyright 本田憲嵩 2017-08-25 00:05:26
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