秋の午後
本田憲嵩
マホガニーの卓上で喫する
ココアにもはや甘さが無い
食傷気味の男によってもたらされる
ひとつの清涼剤としての
装飾品への
空虚な安らぎのひと時
つねに持続する
怠ることが許されない日々
すなわち初潮の薔薇の咲くことのない百合色の肌の手入れ
それを補うかのような
大きな薔薇の花飾り(カチューシャ)の象徴(シンボル)
忠誠の証である
その細い首を絞めつける黒いチョーカー
そして丈の短い黒い着物
それらでもはやすっかりと記号化されて
おそらく今日もきわめて事務的にことを運ぶ夜
一日ごとに冷たくなる風が
痩せこけた身体の隙間と
頭髪の隙間に絶えず吹きぬけ
死に絶える
彼は日ごとに風化する
深海の死者の暗い深度を帯びた瞳を通過する
秋の庭園のトンボたちの午後
まるで飛行機のルーツのように次々と飛び立っていく
彼の主はそんな憂いの表情を愛する