瑠璃木
本田憲嵩
大時計の針の上で寝そべる
空の瑠璃色を映す
湖の波紋が 夜の膜のように拡がってゆく
その浅い水の褥のうえには
夏に日焼けした物憂げな表情が
よりいっそうに青く映り込んでいる
その細ながい胴体である茶褐色の幹も
さらに細ながい桃花心木(マホガニー)の棒のような四肢も
そしてそのやわらかな二つの乳房さえも
ぼくにはすべて押しなべて その球根形に象られた臀部から
まるでそこをひとつの起点として
生えそろっている 一本の樹木なのではないか
とさえ錯覚してしまう
それは夜空から吹く 冷ややかな風によって磨かれた
青い鏡面のつややかさを
そのままに湛えているかのように
ゆらゆらと黒い川のように流れる その髪の煌めきは
たなびく夜を背景とした
無数の星星である