半眼
ただのみきや

最初とりとめもなく
かわいた歩道にうずくまる影を
そっと押さえただけ
絵本の中の魚を捉えた
子猫の白い前足のように
半眼で
光の粒の粗い朝だった

明けきらぬ森の外れ
木漏れる光にふと忘れる鳥のように
意図しない沈黙は美しく響き
一個の閉ざされた海となる

海は拒絶する
考えることを

変化に抗う 視線だけが
拒みながら 失って往く

一つの肢体が遠く光に飲まれ――

わたしは朝顔の花をいくつも水に溶かし
ペンを満たす

失われたものは失われたまま
硬く描かれて尚もゆらめく焔
なにも燃やさず
なににも消されず
逃れようとする
食らうものから

節操もなく目は情欲を掻きたてる
世界は死に往く美しい娼婦で
わたしは詩など書いたこともない姦淫の男

太陽は輪郭を隠す
あざといが熱だけはそこに





                《半眼:2017年8月19日》











自由詩 半眼 Copyright ただのみきや 2017-08-19 20:20:00
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