真夏のアイスコーヒー
st

あれから 何年になるだろう

きみのくるはずのない 
湖の近くの
想い出のカフェのドアをあける

きみがお気に入りだったのは
さざ波や船をみわたせる水辺の

海辺のカフェテラスとこのカフェ

コーヒーは
真夏にのむ アイスコーヒーが
一番好き 
といっていた

きみを想いながら
クリスタルグラスの黒い液体を
ながめていると

からだじゅうに のこる
きみの想い出が
語りかけてくる

くちびるに のこる
きみの あたたかくやわらかなくちびるが
つぶやき

両手に のこる
きみの あたたかくやわらかな手が
触れてきて

クリスタルグラスに うつる
きみの つぶらなひとみが
みつめてくる

きみのいるはずのない
となりの席は
いつものように だれもいないのに

きみとかわした
なつかしい言葉たちが
目をつぶると 聞こえてくる

きみを想いながら 時間をわすれて

いつしか
クリスタルグラスはからになり

たったひとりの窓辺に
夕暮れは訪れる






自由詩 真夏のアイスコーヒー Copyright st 2017-08-19 06:45:12
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