手記より
ヒヤシンス


 茶色い瞳のその奥に青い瞳が眠っている。
 揺り籠から墓場まで、漂い人は驢馬に跨り町を出て、
 二度と同じ場所に帰る事は無い。
 天上へと続く道も途中で途切れている。

 ならば進もう、この星を。
 徒然草も咲いていよう。
 銀河鉄道も走っていよう。
 盗賊共が鞭を手に、彼の人の驢馬を打ち据えている。

 その時、瞳孔が黄金色に輝き、
 彼の人の往く道が照らされた。
 遠くで町の明かりが灯された。

 驢馬は死んでしまった。
 東雲に人は自身の両手をかざし、立ち尽くしながら淡い夢を見る。
 季節を、時代を超越した漂い人の手記である。


自由詩 手記より Copyright ヒヤシンス 2017-08-19 05:17:24
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