手記より
ヒヤシンス
茶色い瞳のその奥に青い瞳が眠っている。
揺り籠から墓場まで、漂い人は驢馬に跨り町を出て、
二度と同じ場所に帰る事は無い。
天上へと続く道も途中で途切れている。
ならば進もう、この星を。
徒然草も咲いていよう。
銀河鉄道も走っていよう。
盗賊共が鞭を手に、彼の人の驢馬を打ち据えている。
その時、瞳孔が黄金色に輝き、
彼の人の往く道が照らされた。
遠くで町の明かりが灯された。
驢馬は死んでしまった。
東雲に人は自身の両手をかざし、立ち尽くしながら淡い夢を見る。
季節を、時代を超越した漂い人の手記である。