カンパネルラの切符
凍湖(とおこ)

仕事帰り
汗も渇いてひび割れたホーム
ペンキのはげたベンチの下から
皺だらけの切符を拾ったよ

それは きのうの日付
はるかなあまの川
カンパネルラの降りた駅から
140円のやつで
あの子は意外に近くにいたのかと
走って走って
夕陽の稜線を駆け上がり
そらへ
果ての駅へ

お弁当をいっしょに食べようと
今夜はきみの好きなからあげ入れたから
だからいっしょに食べようと
ひとりはさびしい
さびしいからおいでよ、と
呼ばったよ

なんなら スイカも切るから、と


もし、見つからなくても
きっと伝言するよ

あの切符みたいに







【petit企画の館】/蝶としゃぼん玉
お題 無人駅の伝言板
より




自由詩 カンパネルラの切符 Copyright 凍湖(とおこ) 2017-08-18 23:46:36
notebook Home