イデア
あおい満月


握りしめた手のひらがほどけるときがいつかやってきたら
私は何か大きな憎しみに似た罪を赦せるのだろうかそれと
もまた別の何かを求めて自己を握りしめる旅をはじめるの
だろうか。いつかは私一人になる。父が消えて母もまもな
く消えて、やがて愛する人も消えて、私一人、氷河の上に
立つ日がやってくるだろう。そのときに、私は太陽の下に
立つのか夜の闇に佇むのか。決めるのは今ここにいる私次
第。今私は、一人かもしれない。けれど、いつもこの目に
は愛する人の眩しい笑顔が見える。私の、愛しい人。真の
己を見つめるという名を持つあなたは、私に光を与えてく
れた。生きるという光。希望を求めて、書くという光。私
はこれから、あなたという私のために、私というあなたの
ために、握りしめたものを信じて歩いていく。きっと森に
は、たくさんの獣がいるだろう。私は獣に身体を噛みつか
れて、血まみれになるだろう。けれど、私はかわらない。
私にはあなたがいる。開いた手のひらは血だらけだ。けれ
ど、その血の向こう側にあなたがいる。あなたは、私の生
きだ。その事実が私を何よりも、誰よりも前へ前へ突き動
かす。私はあなたを、愛している。それを言葉ではなく魂
で私と向き合う者に届ける。そうすることで、私はあらゆ
る魔物を遠ざける。魔物が死んでいく。死にゆく魔物の口
に噛みつかれたものが息を吹き返し、世界は色とりどりの
花々に包まれていく。一人の人間の生きる意志が、新たな
生きを生み出し、歴史を創っていく。意志から意志へと。
時代を繋ぐのは、愛するという一つの希望。


自由詩 イデア Copyright あおい満月 2017-08-14 20:32:22
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