蝉
忍野水香
晩夏に聞く蝉の声はせつなさが漂う
時折、声が小さくなったり
一際大きくなったり
最期の力を振り絞っているようで
今朝、玄関の前に蝉の亡骸が転がっていた
なぜ、こんなところで死んだのだろう
せめて最期はコンクリートの上ではなく
土のある場所で最期を迎えてほしかった
そんな風に思うのは
人間の勝手なエゴかもしれないが
生きるもの全ては
土に還るのが自然だと思う
蝉の一生は短い
が、人間の一生もまた
地球の歴史と比べれば
ほんの一瞬、瞬きのようなものだろう
いつ、どこで最期の瞬間を迎えるかなんて
自分自身にさえ分からない
思いもよらぬ場所で
一人、寂しく逝くのかもしれないが
まあ、それでもいいさ
なんて、蝉の亡骸を見て心の中で呟いた