夏変化
塔野夏子

光 熱 雲の峰 蝉時雨

夏は己の輪郭が
最も融けてしまいやすい季節
多感な者ほどたやすく
変化へんげする

少年も少女も
ふと天使になったり
ふと妖魔になったりする

交わした約束
交わした秘密
せつない追憶とときめく予感の
めまぐるしい交錯

夏の花の名前を並べ
夏の虫の名前を並べ
少年が少女になったり
少女が少年になったりする

陽炎 逃げ水 ふいの翳り 遠雷

少年でも少女でもない者
あるいは
少年でも少女でもある者
二人が手をつなげば
そこからまた互いを変化へんげさせる波紋が
ゆっくりとやわらかく広がってゆく





自由詩 夏変化 Copyright 塔野夏子 2017-08-07 20:47:21
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