なみだ
ひだかたけし
暗闇のなか
玉ねぎを炒める香が
道向こうの団地から
風に乗ってやって来る
瞬間、
懐かしい顔顔顔 浮かんで
自然と涙が溢れ流れる
〈温ったかいな温ったかいな〉
僕は公園のベンチに座りながら
かなしく溢れ続ける涙に感動する
〈生きているんだ生きているんだ〉
濡れる頬はそのままに
僕は何度も呟く
生きている証を
しょっぱい味を
流れ来る食卓の香に溶かしながら
自由詩
なみだ
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ひだかたけし
2017-08-02 21:39:09
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