ocean
ゼロハチ
海が私のなかにある
遠くなる
遠くなる
私は昔ひとつぶの泡
私のなかには海がある
荒れ狂う
荒れ狂う
誰も知らない海の上で
私は嵐が過ぎ去るのを待つ
心臓の奥のほう
傷む腹の中
ひっかき傷だらけの腕
歪んでいるのは世界じゃない
悪いのは水ぶくれのできた身体だ
人はそれを遠くから嗤うのだ
みんな、清潔なふりをして
誰も知らないことがある
私は言葉を持ち
その言葉によって何度でも生き返ること
100の遺伝子たちよりも
私は言葉を信じている
私の言葉の限界が
いつかきっと
私を死なせることも
多分に知っているけれど
私は教えない
人を嗤う
あなたの顔は
存外歪んでいるものだと
あなたにはもう少し
花が似合うと思うのだけれど
鏡の前で我にかえる
私は何も言えないのだ
私は私の海で死ぬことを選ぶ
私の中に海があることを
誰にも教えたりはしないのだから