ocean
ゼロハチ

海が私のなかにある


遠くなる

遠くなる

私は昔ひとつぶの泡


私のなかには海がある

荒れ狂う

荒れ狂う

誰も知らない海の上で
私は嵐が過ぎ去るのを待つ


心臓の奥のほう
傷む腹の中
ひっかき傷だらけの腕


歪んでいるのは世界じゃない

悪いのは水ぶくれのできた身体だ


人はそれを遠くから嗤うのだ


みんな、清潔なふりをして



誰も知らないことがある

私は言葉を持ち

その言葉によって何度でも生き返ること


100の遺伝子たちよりも
私は言葉を信じている

私の言葉の限界が
いつかきっと

私を死なせることも

多分に知っているけれど


私は教えない

人を嗤う
あなたの顔は

存外歪んでいるものだと


あなたにはもう少し

花が似合うと思うのだけれど



鏡の前で我にかえる


私は何も言えないのだ


私は私の海で死ぬことを選ぶ


私の中に海があることを


誰にも教えたりはしないのだから





自由詩 ocean Copyright ゼロハチ 2017-07-29 23:28:22
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