夏の幸福
ヤスヒロ ハル

海水の上澄みが

湯葉のように纏まり

ヒトデ型にくり貫かれ

それを渡り鳥がくわえて

南の方の国境へ

ぽとりと落としました

すると、そこからにょきにょきと

裏の貼っていない鏡が伸びてきて

西の国と東の国を写し返しました

それまで争っていた両国は

国境が

反射しているのか透けているのか分からず

混乱し、後にばからしくなって

とうとう和解しました

そこで記念に鏡は粉々に砕かれ

その破片は夜空に帰りました
しばらくは北を指し示したりなどしましたが
月が満ちたり欠けたり忙しないので

ヒトデの波は海に戻り

たゆたいたゆたい眠りました

地表では和解した二つの国の男女が

海水浴へ行こうと

夜にたゆたい 話すのでした


自由詩 夏の幸福 Copyright ヤスヒロ ハル 2017-07-29 20:33:29
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