おかし詰め合わせ
ただのみきや
*名を呼ぶ
名を呼ぶ
ここにいないあなたの
井戸へ放った小石のように
真中深く 微かに響き
瞑っても
抱き寄せることはできず
こみ上げる揺らめきの
糖衣はすぐに消えて
胆汁のような酸い苦み
――そうしてまた
名を呼ぶ いつまでも
ここにはいないあなた
*今夜海の方で
今夜海の方で花火をやるらしい
夜空を彩るでっかい花が
バーンと開いてチラチラ散ると
いったい幾つの瞳の中
小さな花が咲いたり散ったり
夜もすっかり更けた頃
背負われたこどもの夢にも開く
今夜海の方で花火をやるらしい
*透けた仕草
ひとりに慣れてる者ほど弱い
愛など名乗らず差し出した
裸の心の体温に
閉ざした扉が勝手に
開いて
訝しむような素振りだが
ねだることは変わらず苦手
自分と掴みあったまま
いつまでたっても動けない
手持ち無沙汰の指先が
傷口のファスナーを弄ぶ
*あいうえお
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・・・・・・・…・・…・・・…・・・・・・…
・・・・・…雨
・・・・…いま 「大きなカタツムリだよ 」
・・・…生まれた――――
・・・・…笑む 「嫌いだって言ったのに 」
・・・・・…音
・・・・・・・…・・…・・・…・・・・・・…
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《おかし詰め合わせ:2017年7月29日》