逃げ水、打ち水、この夏、
かんな
揺らぐ逃げ水に夏が透きとおる
容赦のない日射しに
深く被った帽子を右手で押さえる
アスファルトが反射した熱
吸い込んで汗ばんだシャツ
歩くたびすり減る靴底に
地面との摩擦熱を感じている
ふと、靴ひもを結び直す
時折、真っ青な空を仰ぎ見る
旅には出ない日常で旅をする
感性を研ぎ澄ました時に
冒険が始まることを幼い頃知る
海辺に君と座ると
気もちはさかさまな恋をした
伝えても切れ端にしかならない
ことばの断片は花火になる
なぜ、と首を傾げる浴衣姿
でも、繋ぐことのない手と手
この夏にもあの夏にも
揺らぐ気もちが波打ち際で
ぱしゃりと跳ねる
毎日、打ち水をする
この、夏が濁ってしまわないように