走るあたし/歩くおとこ
もっぷ

性別おとこに生まれていたらと熱心にお祈りしていた頃があった
いつでも家から逃げ出してホームレスになれるじゃない
くれないのベルベットのシュシュで三つ編みを飾るほどの
何すらもなくってだからかなえてもらえないんだと唇を噛んだ

毎朝毎朝きょうも女の子だったと(心のなかで)
神さまに蹴りを入れて(と、うその日記は書かなくっても)
走って電車に乗って毎朝毎朝一分の遅刻 わかってても
一分の遅刻も百分の遅刻も同じ扱いの学校であっても

あたしの頃にわたしは走ったばかみたいに走り走り
走り続けてクラスでビリから二番目の成績で学校を放り出され
性別おとこに生まれていたらと もう思ってはいない

けれど考えてもみれば真冬のことをよ
繁華街を海パン一丁で歩いてみたってさあどうよ
おとこだったら ああばかがいるよ で済むじゃない



自由詩 走るあたし/歩くおとこ Copyright もっぷ 2017-07-23 23:02:22
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