こころ
ただのみきや

つかみどころのない臓器
痛みはあっても在処のない

つるりと気取った陶器
来客用もちゃんとある

すきま風の絶えないあばら屋
震えている いつからここで

過敏すぎる 肉を削いで裏返しに着たくらい
かと思えばこんなになるまで気づきもしない

火掻き棒も真っ赤になるほど熱く燃え
朝には消し炭 冷たい寝床

融かし込めない いくつもの過去が
かたい面持ちのまま結晶して層になった

マトリョーシカ
カタカタ鳴る内側には耳を塞ぐ術もない

儚い夢には事欠かない中身をさらけ出しても
大した仕掛けがあるわけでもなく

三つの鏡に囲まれてぽっかり空ろ
痛みの欠片がいくつか落ちているばかり

生の意味なんてどこかへ置き忘れ
回し続けて 覗き続けて

煌めく仮象に夢中になって
すっかりほどけるその日まで

すすり泣くようないつかのこだまと
花を散らして風の筆先

閉じ込められたそのままで
あちらこちらと彷徨って

ひとりよがりの蝶の戯れ
絆より傷を 軌跡を 残像を




            《こころ:2017年7月19日》










自由詩 こころ Copyright ただのみきや 2017-07-19 18:13:56
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