夏の扉が開かれる時
そらの珊瑚

遠くで雷が歌っている夕刻
羽が生えた蟻をみつけた
それは
退化だろうか
進化なのだろうか
いずれにしても
この世界にとどまる現実の形だ
つぶされないうちに
飛んで逃げればいいのに
なぜか所在なく歩いている
それとも
羽は飾り物で
飛べるなんて幻想なのか
そしてまた
飛べたら自由になるなんて
幻想の極致かもしれない

北極の熊を想う
どんなに冷たくても凍らない黒い瞳を想う
私の中の極北へは
もちろん羽がなくても行けるのだが
うっかり肝心の呪文を忘れてしまったみたい
雷を浴びてしまったせいだろう

硝煙の匂いがする
(始まりの合図)



自由詩 夏の扉が開かれる時 Copyright そらの珊瑚 2017-07-18 14:28:55
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