みゆき
薔薇の人
みゆきちゃん、みゆきちゃん、一緒に帰ろう
おさげの髪を揺らして少女は誘う
茜色の夕日が窓から差し込み、教室のそれぞれを焼き付ける
饐えた色をした机や黒板にノスタルジィを香る歴史も経ていない純情なスカート
赤毛の少年が校庭でボオルを蹴りとばす音が耳小骨に轟音を立てる
ふ、と熱風がカーテンをくぐりみゆきちゃんのロングヘアをなでて廊下へ消えていった
あとに残るのは虚空の教室 焼土の証は木々の燃えカス
むせ返る煙の、燻された痕跡は変色した柱の禿げた赤銅色
みゆきちゃん、みゆきちゃん、一緒に逝こう
つもる塵の、浅黒く深い時間と 青春の影