隠元
石田とわ

   あしたの天気予報をテレビで眺め
   ちゃぶ台のうえのビニール袋から
   隠元をとってはへたをとり
   ざるに放り投げてゆく
  
   あしたは夕方雨が降るらしい
   隠元は見事なほどに不揃いで
   なによりうんざりするほどある
   夕暮れが染み込み始めた部屋の片隅には
   畳み終えた洗濯物がつまれたままになり
   空っぽになった洗濯籠では猫が寝ている  
   ざるいっぱいになった隠元を眺めながら
   これを天ぷらにするのが少々面倒でもあり
   大皿に盛られた天ぷらをみんなで食す姿を
   思い浮かべると楽しくもある
   
   とりあえず洗濯物を片付けて、天ぷらを作り
   お風呂の支度をしなくてはならない。
   あした傘を持たせるのを忘れずにいよう
   不揃いな隠元たちよ美味しくあれ


   





自由詩 隠元 Copyright 石田とわ 2017-07-08 03:13:17
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