隠元
石田とわ
あしたの天気予報をテレビで眺め
ちゃぶ台のうえのビニール袋から
隠元をとってはへたをとり
ざるに放り投げてゆく
あしたは夕方雨が降るらしい
隠元は見事なほどに不揃いで
なによりうんざりするほどある
夕暮れが染み込み始めた部屋の片隅には
畳み終えた洗濯物がつまれたままになり
空っぽになった洗濯籠では猫が寝ている
ざるいっぱいになった隠元を眺めながら
これを天ぷらにするのが少々面倒でもあり
大皿に盛られた天ぷらをみんなで食す姿を
思い浮かべると楽しくもある
とりあえず洗濯物を片付けて、天ぷらを作り
お風呂の支度をしなくてはならない。
あした傘を持たせるのを忘れずにいよう
不揃いな隠元たちよ美味しくあれ