星輪
藤鈴呼
風を止めようと思いました
ふんわりと歌う 白いカーテンに 話し掛けましたが
反応が ありません
もしかしたら 聴こえていないのか、と思い
もう一度 声を荒げてみましたが
風は ふんわりと 翻るまま
まるで 弄ばれても いるようです
白いカーテンだから 駄目なんだ
闇に溶ける瞬間を 知っていますか
少しずつ 星空が 近付いて 来るのです
本当の距離など 知る由も ありませんが
遠く 遠く
絶対に 手の届かない場所だと言うことぐらいは
幾ら 知識の足りない私とて 知っています
それで 行方不明の時計を 捻り倒すのです
時間よ止まれ 時間よ止まれ
そんな呪文が 全く意味を為さない事ぐらい
知って おりますのに
それでも 止められないのは
自ら荒げた 声 そのものでした
風も 止まろうと 思いました
きっと 私は風では ありませんけれども
もし ワタクシが 風であるならば
一度くらいは 止まろうとするのでしょう
狂おしい位に 泣き叫ぶのは
何か 悲しみを背負った所為
表現する術を 知らなくて
書き殴る 時間すら なくて
あるのは この ユビばかりなのですけれども
合う輪が 見つからない
目の前には キラキラと光る リングが在るのに
その輪とも ちょっと 違うのです
淡い光のようで
遠い お話
あと とお 数えますから
ゆっくりと 退場して くれませんか
闇の主に 語りかけました
風は 少し 耳を傾けました
荒げる声に 反応した訳では ありませんでしたが
ほんの少し この声が 届いたかのようで
もう それだけで わたくしは 安心して
眠れるので ありました
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