絵ソラシドう?
ただのみきや
死の天使は軽妙がいい
悲壮は生にこそ相応しい
諦めもある一線を越えれば解放だ
概念だけの救いなんて幽霊にも劣る
仔犬のように震えている
不安の口に手を突っ込んで
ズルリっと裏返し
かき集めた理屈の切れ端を詰め込んで
縫い合わせたらのっぺらぼう
知的なボタンで目鼻をつければ
頭が抱きしめる縫いぐるみの完成だ
だけど
そこじゃないところ
胸や腹の奥深く
葬り去ったはずの棺の中から
ノックする
不規則で
刺すような
心音が
高く 低く
残りの時間を刻むかのようで
欹ててしまい
眠れない
それも人なら
未知への誘いに
夜明け前に目を覚まし
薄紫の窓の向こう
静かに凝視してしまう
それもまた人
準備は早いほうがいい
慌てて出発しないがいい
出て行けと言う者あれば
ことさらに居座ることだ
死にたいと思ったら
死なないことだ
こればっかりは一人がいい
付き合いが悪いと責められても
「ごめん」で済ませ
なんて
言うのは容易いこと
分かり切ったこと
だからそうしなかった人を
責める気はない
誰をも
誰にも
平均寿命に何の意味があろう
均してどうする それぞれ違うものを
人より長ければ得か
人より短ければ損か
選べない時の器の容量を気にするより
無心で注げばいい生の充実よい酒を
ああだから死の天使は軽妙に限る
迎えに来たなら少しばかり
駄々を捏ねてみるもの一興だ
この手を取りつつも 踏み出す一歩を待ちながら
どんな手管でその気にさせてくれるのか
あれこれ想像するのは楽しいこと
だがすべては絵空事
あてにはならない戯言だ
《絵空死どう?:2017年7月5日》