波
ゼロハチ
あなたがあの夜話そうとしたこと
わたしは聞かなかった
朝になり、あなたはこの世界からいなくなった
あなたが名前を教えてと言っていたこと
わたしは教えなかった
夜が訪れる前に、あなたもこの世界からいなくなってしまった
こんな風に、いなくなってしまう
ぬくもりも、手のひらからすぐに消えていった
あなたたちは、私にとって全てだったのに
わたしなんかが朝を迎え
わたしなんかが夜に佇む
毎日毎日、命を食いつぶして
わたしはどうして生きているのだろう
わたしは今もくりかえしている
二度と触れられることもないのに
同じことを繰り返している
歩けぬわたしを背負ったあなた
恐れるわたしを抱きしめたあなた
ちいさなわたしを愛してくれたあなたたち
わたしがいなくなっても
あなたたちと同じところへは行けないのだろう
だから今はいなくならないように
歯を食いしばって歩いている
あの夜話したかったことは何
教えてほしかった名前は何
わたしができたことは何
愛していました
愛していました
愛してくれてありがとう