もつれる
伊藤 大樹

わたしの骨が
気づかぬうちに
新しいカルシウムに変わるように
少しずつ平和はゆがんでいき
ついに/衝突する

わたしの眼球が
くだけちって
歩行困難になり
手脚ふるえて
滲んでいく水際、
余白は
悲しみのぶんだけ用意されている
或る日
靴が片方なくなり
素足で帰った
それから毎日ひとつずつ
周りのものが消えていった
誰にも買われない林檎は
そうして
ひそかに 腐っていく

(胚胎する頽廃、)

或る日 気づいたら
わたしには
もう 言葉しかない


自由詩 もつれる Copyright 伊藤 大樹 2017-06-23 19:15:54
notebook Home 戻る  過去 未来