駅
前田ふむふむ
マダ ツカナイノカ ネー
かぼそい声の
母は 床ずれをした背中を
不自由によこにする
白いベッドのシーツから
石鹸のにおいがする
アア エキニ ツイタ ヨ
母はうすく眼をあけている
うん 降りよう か
また いっしょに あした氷川様に いこう
ソウダ ネー
子供のように
皺くちゃに唇をむすんだ
母は
眼を瞑り 寝ているようにみえる
知らないうちに雨が止んでいた
窓から見る空に めずらしく
いくつもの星が見える
うえのほうで大きく ひかり
そのとなりで小さく ひかる
脈打つ体温のように
あれが ガスや岩でできているというのは
みんな作り話だ
もうすぐ 母は星になるのだ
※氷川様 大宮氷川神社のこと