最初にもらった手紙を読みながら世界の終わりを待つ
竜門勇気

22時半 同行者を連れ
紅茶を飲みながら
車を運転する

行き先はまだ
できてはいない
ただ材料だけが
煮込まれてる
ハンドルにこびりついた
パンくずが
指先に触れて
膝に舞った

こじれたでたらめ
僕らの関係性は
そんな風になら
例えられるんだぜ
閉じた窓に
風が吹き付ける
冷たい場所から
凍えてきたのに

どこにも居場所はない
今こうしてるのも
あそこが帰る場所だって
思ってみたいからだけなのかもな

黒いガラスに
灰色の石をぶつける
真夜中のテレビみたいな
光が踊って消えた
何処かにたどり着くときには
いつもこんな光景を
見てたような気がしてる
今日も例外じゃないってことだ

止まったエスカレーターの
最初の一歩
なんか変だよな
おかしくて笑うよな

何かに気づいたようで
それはすぐに過ぎ去る
そしてどこにでも有る
歩みが始まる

屋上の鍵を壊して
意味なくパンダを蹴飛ばしてみる
綿菓子を作る機械を
引き倒して哄笑を起こしながら跪く
観覧車のゴンドラに
君を押し込んで
僕は手紙を読みふける

世界の終わり
ここにこい
向かいの席で
同行者は眠りだした

星は光でしか無い
ビルも光でしか無い
手紙の中の文字も
同行者の寝息も

1時45分 世界の終わりが到着
同行者がにゃあと鳴く
光がないのに
闇が見える

ここにないものしか
欲しがれない
望まなかった場所にしか
帰れない


自由詩 最初にもらった手紙を読みながら世界の終わりを待つ Copyright 竜門勇気 2017-06-19 01:33:17
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