岸の家
jin

高潮がとどかない
岸の家
朝霧につつまれて
素描のようにかすれている

ざわめきがとどかない
途切れた鉄路、廃石の丘
みすてられた彼岸に
まぼろしめいて建って

此岸の水面のかがやきも
あちらでふいに失せていく
遠くの空ゆれてずれて
ひっそり切りはなされていく

はぐれた雲の葬列が
屋根の上いかめしく停滞し
誰もしらない局地的な雨で
時折、けぶっている様子

偏屈な場所に建てて
あの家族は出かけられないでいる
窓に貼りついた人影
音のない声があわぶいて

「人影のある窓」が複製されていく
壁一面から道ばた、岸辺まであふれて
花つみや水浴びの子らは
無邪気にふみちらしているだろう。


自由詩 岸の家 Copyright jin 2017-06-16 15:48:37
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