見渡せば
藤鈴呼
踏切の向こう側
校庭を囲むように
桜並木が微笑っている
少し進めば
市役所と神社へ向かう道にも
見え隠れしている
活きてはいるけれど
動かぬ枝たちは
見えたり隠れたりする
術を知らない
代わりに
花びらたちが
これでもかと言う程の
シャワーを演出してくれている
未だ 蕾ばかりで
花びらのマクロ撮影には
成功していない
近付かないから猶更
機会など 訪れない
あなたと一緒に観ようと決めた桜だから
わたし 独りきりでは
楽しめないのと 独り言
呟いた刹那
デキャンタの中で
幾つもの茶葉が
ふよふよと踊る
少し 塩っ辛い位に染めた
サクライロの紅茶は
やや 出涸らし
枯れた肌を 何とはなしに
健康色に 染め抜いて
だから ソメイヨシノ なんてね
笑いながら 振り返るけれど
あなたは いない
今度 一緒に…
そう 決めた
肌の上を伝う涙のように
液体の上を浮遊する茶葉のような
散り散りの心に
一体 誰がした
そして 何時から
絞り込んだ 出涸らしの味
待ち侘びた 一滴が
胸に 痛い
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