夕陽に顔面
渡辺八畳@祝儀敷
長い黒髪 風にゆらめかせ
女子高生 夕陽を望む
滑らかな曲線を描くシルエットが
逆光によって赤い校庭に写し出される
女子高生は
ゆっくりと
こちらを向いて
その顔面が落ちる
ストンストンと真っさかさま一直線に落ちる
何枚も落ちる止まることなく地面に落ちる
落ちて入れ替わって落ちてこちらを見つめてくる顔面は無い
落ちる落ちる落ちる奇術のマスクのように落ちる
落ちる落ちる落ちる滝のように目まぐるしく落ちる
静止した胴体と反して次々変わる顔面の状態
周りの風景もいつの間にか激しく変わりだす
空は絶え間なく256色に移り変わり
早送りのよう雲は飛び月陽星々は回り続ける
ついに女子高生のハイソックスの縁から虹色の水が溢れだし
爪はどんどん伸びていって蛇のようとぐろを巻いていく
すべてが落ちて変わって飛んで回って動いて暴れて暴れて暴れて
百面相の顔面は険しい山を盛り積み造りあげているが
ただひとつ女子高生の胴体だけは
静止して
動かない
それ以外の全世界は恐ろしい速度で変化し続ける