無口ゆえに
葉leaf



すべてを話せるのなら
詩なんて書かなかった
人の間に立ち
場に即した言葉を選んでいるうち
いつしか僕らは機械のように
必要最小限しか話さなくなった
これを話せば秘密が漏れる
これを話せば相手を傷つける
これを話せば変人だと思われる
人の間に立ち
言葉には見えない壁がいくつも立ちはだかる
壁を越えていくのは事務的な言葉だけ
ほんとうの言葉は
いつでも壁のこちら側に隠れている
僕らはそうしてほんとうの言葉を話すために
こうやって密室で詩を書いているのだ
言えない言葉
言ってはいけない言葉
みなさん
僕らは無口であるがゆえに
詩人になりました


自由詩 無口ゆえに Copyright 葉leaf 2017-06-11 08:58:45
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