キクザキイチゲの生た丘に
藤鈴呼


花は太陽が好き
夕方になると萎んでしまう理由
それは 闇が 怖いから

昼間になると
そりゃあ 天敵も 多いけれども
朝露も 温かくなって
笑顔のように 耀いている

冬の 落し物
隣の丘から 運ばれて来た
赤い花びら

あれは 山茶花って言うんだよ
椿の花が 教えてくれた
君は白く
ぽつんと転がっている
低く 項垂れた首が
ちょっと 哀しげに 歪んだ

光に包まれて
薄紫の 細長い花びらを
風に 漂わせる 三人娘
花びらの寂しさを 汲んで
慰めても いるようだ
両手を広げて
護っても いるみたいだ

一陣の風
思ったより 強力で
花びらは 放たれた
虚空へと飛ぶ 逃避行

居なくなった地は
いつまでも 土色に非ず
次の春を 運んで来る
新たな芽が 直ぐ 其処に
新たな目が 直ぐ 其処に

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自由詩 キクザキイチゲの生た丘に Copyright 藤鈴呼 2017-06-05 22:53:35
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