蝸牛は干からびて行く
坂本瞳子

干からびてしまいたい

気持ちのはけ口を見つけられないまま
縁石の上を這いつくばって
微かに歩を進めるカタツムリに
塩をかけてやろうかと
想像だけで止めておいた

そもそも野外で塩なんて持ち合わせてない
そもそもナメクジではないだろうに
カタツムリにも塩をかければ溶けるのだろうか

そういえばその昔
貝殻とナメクジでカタツムリの形を成すペアネックレスの
ナメクジを迷わずに選ぶ女子大生が描かれた映画を観た

あれくらいのケッタイさでは足りないだろう今の自分は
作り笑顔のひとつもできず
愛嬌の欠片も持ち合わしておらず
スキップの仕方さえ忘れてしまい
誰かと手をつなぐことさえできない

フォークダンスなんて踊れない

干からびてしまいたいのはこの私だ
誰か塩をかけてくれるのでもいい
溶けてなくなってしまいたい

仰向けでいい


自由詩 蝸牛は干からびて行く Copyright 坂本瞳子 2017-06-04 00:26:15
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