波打ち際の彼女
日々野いずる

腹立ちまぎれに
太陽に目がけて投げ入れた叫びは
放物線をかいてじゅっと蒸発し
陽と一緒に水平線に飲まれて消えていく

海辺の彼女は
「だからいったのに」というそぶりを見せ
つまらないものを弄ぶように
波を爪先でつついている

暮れる陽が段々と輪郭を揺らし
肥大化した神経が高ぶり
また叫びだしたくなってしまう
細い後ろ姿が酷く恐ろしい何かに変化する
瞬間がそこまで来ていた

薄闇にぼやりと浮かぶ
分からないそのものは
ついにはこちらをじっと見て

私が恐れる言葉を発する前に
波がさらっていってしまった


自由詩 波打ち際の彼女 Copyright 日々野いずる 2017-06-03 23:49:11
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