波打ち際の彼女
這 いずる
腹立ちまぎれに
太陽に目がけて投げ入れた叫びは
放物線をかいてじゅっと蒸発し
陽と一緒に水平線に飲まれて消えていく
海辺の彼女は
「だからいったのに」というそぶりを見せ
つまらないものを弄ぶように
波を爪先でつついている
暮れる陽が段々と輪郭を揺らし
肥大化した神経が高ぶり
また叫びだしたくなってしまう
細い後ろ姿が酷く恐ろしい何かに変化する
瞬間がそこまで来ていた
薄闇にぼやりと浮かぶ
分からないそのものは
ついにはこちらをじっと見て
私が恐れる言葉を発する前に
波がさらっていってしまった