双つの色
木立 悟





乾いた滴の跡が幾つも
木板の上につづいている
溝の流れから逃れた子蜘蛛が
葉に残る滴を見つめている


遅れてばかりの日時計に
忘れた夢がよみがえる
水彩の音
水彩の文字


遠く遠く鳴る空に
無数の傷が浮かび上がり
ひとつひとつがはばたきながら
音もなく重なり 消えてゆく


親に要らないと言われた子らが
親の無い子らと争いつづける
血と叫びは止むことなく
すべての屋根を錆びつかせてゆく


水たまりと水たまりをつなぐ渦から
双つの色のうたは昇り
仄かにこがねの横顔の
ふせたまぶたの迷路のみどり


枯れた音のままの原から
春はひっきりなしに冬になり
羽を風をちぎりながら
はざまの季節を鞣しつづける






















自由詩 双つの色 Copyright 木立 悟 2017-06-02 09:26:49
notebook Home 戻る