ブラックアップル
秋也

甘味は旨味であり
糖はいつだって甘く
舌に感知させ
甘味を脳に伝える
多幸感

人は甘味を欲し
人は甘味に執着する
甘味は人を縛るほどに依存させる

欲望は無限で際限がないと安易に言われる
大間違いだ
人の欲は叶えてしまえばあっけなく
執着は残すものの、興奮も後は山を下るばかりだ

欲が満たされた後の虚無感
そこに絶望がある
落とし穴クレバス下山注意

齧る程に甘く
蛇は静かに忍びより
夢中な人
芯と種まで貪り喰う

甘味は独占したいが
一人では空しく
多人数では取り分が減る
種まで失くせば
次の実は育たず
種を一粒残せば
次回の実はあれど最初の甘さはどこにもない

僕は確かに甘さを味わった
また甘さは欲しい
でももう味わった
「なんだこんなに甘いのか」

蛇は姿を変え黒く黒く闇に成り
人に堂々と取りつく
もう異形を隠す必要もない
「人の欲が無限であれば我らなどとうに駆逐されている」

神が用意した樹
取り忘れの果実ひとつ
闇より深く黒く実る
熟し腐り
地に落ちるまで
欲も朽ちて土に還れるのだろうか


自由詩 ブラックアップル Copyright 秋也 2017-06-01 17:48:09
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