スティグマティクス
ただのみきや

透明な何かがかすめた
それで十分
脳は甘く縺れる痛みの追い付けない衝撃に
砕かれ 失われ
死に物狂いで光を掴もうと
欠片たちは
凍結されることを望みながら
永久に解読不能
時間の延滞の中
残りのわたしは見つめた
慣性の中模索するかのようで
その実虚無へと枝垂れて往く 
散らされた欠片たちを
黙したまま一瞥で
無闇に傷を与えることもできる
仰向きの喪失の形状を


欠けに欠け 失くしに失くし
故にひとつの鋭利な先端を振りかざす様で
均整も取れずにふらついていた
わたしを
あなたは見たのだ
触れもせず血を流しながら
まるで素足でガラスの廊下を渡ったかのよう
痛みの中のつぶらな輝きに
かつての
あの透明な 名付けることも無意味な
出来事が奪った
かたちを 痛みを
想う前に 共振してしまうのだろう
与えるかのような
聖人の愚かさと
狂人の静けさに
貪られながら



              《スティグマティクス:2017年5月31日》








自由詩 スティグマティクス Copyright ただのみきや 2017-05-31 20:40:08
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