降るもの 3断章
新人さん
1
張りつけられた心は
鉄を含んでもいないのに
錆びるさびるサビル
錆びて凍てついた心は
剥がれる
剥がれる
根こそぎ剥がれてしまう
はがされた裏に何があるのかのぞいてみたら何もない
何もないんだ
なんだ、これが僕の心か
なんて薄っぺらくてちっぽけなんだ
2
雪が降る日でもないのに
何か降ると思ったら
思い出が降り積もっていた
小さいころの母の思い出
幼いころの初恋の思い出
嬉しかったこと悔しかったこと
降るふるフル
降り積もる
歌を歌うように降り積もる
こんなさびしい駅で
降り積もったところで行き場もないのに
僕は問いかける
「列車はいつ着ますか?」
誰も答えない
駅員すらいない
ため息をついた瞬間ものすごいスピードで
風がこの駅を追い抜いた
3
思い出が降る
降り積もる
母が降る
雨が降る
真珠みたいな宝石が降る
空虚な価値観が降り積もっていく
意味のないものばかりが降るものだから
こうして黙っていれば溶けていくと思ったら
降り積もる
雪になって降り積もる
寒いさむいサムイのです
あまりにも寒い
寒すぎてもう動けません
僕はうずくまる
あの空の向こうから
こんなに思い出ばかり降るというのに
未来の約束はどうなっているのか