白とける白
木立 悟




冷たい夜に
むらさきとむらさきが向かい合う
岩の径を
音だけがすぎる


鉱と鉛の紙
指を回る火の震え
小さな鈴の音をたて
砕けるように消えてゆく


空の一部をちぎり くるみ
花ではない花は咲きつづけ
粉は氷 血と水と銀
重なりつづける羽だけの生きもの


蒼と黒の階段を
燃え上がる背が静かにのぼり
角を曲がる孔雀の尾
三つの手のひらに持ち去られる冬


霧の坂道を
人とけだものの影がゆく
霧はただ中空を巡り
弦の音を湿らせてゆく


矢のかたち
矢の光のかたち
水に溶けながらなお
かたちであろうとするかたち


蒼と黒の街のなかに
鉛と鉱の紙はたなびき
白い手は忙しく行き来して
昼と夜を混ぜ合わせてゆく





























自由詩 白とける白 Copyright 木立 悟 2017-05-24 19:05:09
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