慰安婦の強制性に関する会話 (3)
Giton

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―――― よくわかる話です。私も、ごく身近に性暴力被害に遭った人を知っています。彼女たちがその後どうなるのかは、体感的にわかっているほうだと思います。 従軍慰安婦という性暴力の極限的な形態を経験した人が、どれほどのものを背負うのか、私には想像できませんが、それでも想像を絶するものだということぐらいはわかります。 確かに、対面的な理解を日本人全員に求めるのは不可能です。冷静に、一歩引いて考えれば、「性奴隷制度」であったことはわかりそうなものなのですが、何か心理的な障害が、その事実認識を否認させてるのでしょうか。


 ‥そういうこともあったので、私の感覚としては法律や理論が重要ではなくて、何か別のものが道筋を開くのではないかという感じをずっと持っているのです。「朝までテレビ」のような理論ずくめで来られると、いちばんのウィークポイントは、元慰安婦の証言に、具体的な点では変遷がままあることです。

 彼女らの体験は何十年も前のことで、しかも思い出さないようにしていた忌まわしいできごとなのですから、しかたのないことです。それと、具体的な強制の仕方(慰安所に着いてからではなく、連れて行かれ方)については物証が乏しいこと。発掘された資料のほとんどは国の関与に関するものです。

 私たちは、元慰安婦との「対面」によって、一気に問題の理解に達することができたのかもしれませんが、これからは、とくに国民一般にとっては、知識や資料から理解してもらうほかはないと思います。その場合、一歩下がって眺めるような視点がよいような気がしています。細かいことにこだわると、済州島の「慰安婦狩り」は確認できないとか、否定論者の迷路にはまってしまいます。だから、資料館のケース展示…のような形で少しずつ見てもらうのが、私はむしろいいような気がしているのです。自分の体験の外へ一歩も出ないような拙いことばかり申し上げてすみませんでした。


―――― 興味深い話をありがとう。たいへん勉強になりました。何かお役に立てることがあればいつでも言ってください。


 ありがとうございます。いまちょっと徴用工関係で考えていることがあります。着手はいつやらも分かりませんが、いつかお力を借りることがあるかもしれません。その時は、よろしくお願いいたします。


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【後記】最近、日本軍の慰安婦問題について、「専門家の議論に従うべきだ。シロウトは口を挟むな」と言う風潮があるのは、誠に残念である。というのは、日本で「専門家」と自称他称される人たちのかなりの部分は、この問題を理解しているとはとうてい思えないからだ。

 彼らは、理論と知識だけを振りかざし、細部に拘泥して、可能な限り被害を薄め、可能な限り日本と日本軍・政府の責任を減殺しようとし、同時に被害者たちを侮辱している。

 彼らの侮辱は、この「現代詩フォーラム」において明らかなように、被害者を擁護しようとする私たちにも、あからさまに向けられる。

 「理解」は頭脳の問題ではない。だから、この問題には「専門家」はありえない。そのことを私は強く主張したい。(2017.5.23.)
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散文(批評随筆小説等) 慰安婦の強制性に関する会話 (3) Copyright Giton 2017-05-23 15:15:11
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